【連載】韓国ひとり歩き

NHKテレビ　ハングル講座

1995.04→1996.03

どす黒い雲が釜山の港町を覆うように広がっていく。
陽はまだ沈んでいなかったが、ポジャンマチャ（布張馬車）のアジュモニたちはカンテラを灯しだした。夕食までの少しの間に、旅人は影島大橋を渡って影島まで出かけることにした。

友人と加波島に行った。済州島モスルポと韓国最南端に位置するマラドとの中間にある小さな島。「美しい島」だと、釣り好きの知人が教えてくれた。モスルポの船着き場から渡し船に乗った。波が荒く舟が揺れる。

車窓から田園風景を眺めながら、金海平野を行く。村人たちは、田植え作業に余念がない。機械化が進む韓国の農村ではあるが、ここでは赤牛が野良仕事に欠かせない存在であるように映った。オモニが木陰で洗濯をしている。

旅人は、活力あふれるソウルの街が好きだ。しかし、撮影での移動が重なると、いつしか旅人の体は疲労こんぱい状態となる。横断歩道がほとんどないこの街では、広い道路を渡るためには地下街に潜らなければならない。

金浦空港から市内までバスに乗った。ソウルでは、バスを自由に乗り継ぐことができるようになれば行動範囲はグンと広がるのだが、観光客にとっては路線が複雑で難しい。しかも、バスはなかなか定められた停留所には止まってくれない。